“Invitation to Kumano: A Case of Regional Cooperation Applying Humanities by the University of Tokyo” Held

人文社会系研究科主催による「熊野への招待:東京大学の地域連携の一試み」が、2023年3月17日(金)午後6時(EST)より東京大学ニューヨークオフィスにて開催されました。

東京大学大学院人文社会系研究科・文学部は、2021年に熊野地方の中核都市・和歌山県新宮市と連携協定を結びました。人文学と地域社会が連携することにより、地域社会における学術・文化振興、地域活性化に資すること、熊野研究の更なる発展、東京大学の学生の体験活動や、新宮市の中高生の教育活動のさらなる充実などを目指すものです。熊野地方は、日本では古来よりの聖地霊場として有名ですが、その歴史や文化などの魅力を学術的に海外に発信してゆくことに苦慮する現状がありました。今回のイベントは、新宮市と人文社会系研究科が協働し、学術的な対象としての熊野の魅力を国際的に発信するキックオフイベントとして企画されました。

UTokyoNYオフィスでのオンサイト開催に、Zoomを使用してのオンライン同時配信を行い、アメリカと日本を中心に、他の国々からも多くの方にご参加いただきました。対面では30人弱、オンラインでは70名を超える方にお越しいただきました。

 

セミナーは、唐沢かおり教授(社会心理)がモデレーターとなり、まずは、秋山聰研究科長(当時・美術史学)によりIntroduction to the UTokyo Humanities Kumano Projectというタイトルで趣旨説明が行われました。続いて、東京大学への留学経験のあるユキオ・水田・リピット教授(ハーヴァード大学・日本美術史)がInvitation to Kumanoのタイトルでお話しくださいました。続いて、太田泉フロランス助教(美術史学)によりInvitation to Kumano -Activities of Regional Cooperation with Shingu City in Kumanoのタイトルで本プロジェクトの詳細が紹介され、後半の研究発表へと続きます。松﨑照明客員教授(東京家政学院大・日本建築士)はConstruction and Repair of the Architecture of Sacred Site of Kumanoとし、聖地熊野の建築物の歴史とその修復について報告を行い、続いて、熊野地方から山本殖生氏(国際熊野学会代表・宗教民俗学)がKumano, Sacred Sites in Japan: Fund Raising activities of Kumano Bikuniの講演で、中世日本で熊野への勧進を行なった熊野比丘尼と呼ばれた女性たちについて報告しました。休憩を挟んで、熊野比丘尼が熊野をプロモートする目的のもと中世以来日本各地で行なった、熊野の聖地を描いた曼荼羅を示しながら、図像の説明をする絵解きの再現が、那智ガイドの会の生熊みどり氏により行われました。

 

今回のセミナーは、熊野の歴史文化、そして東大人文・熊野プロジェクトの紹介、さらには絵解きの再演というラインナップで、アメリカ、そして日本の一般の方にとっても内容的にもわかりやすく、視覚的にも楽しんでいただけるセミナーとなりました。活発なディスカッションも行われ、セミナー後のレセプションでも、熊野の魅力と国内外の宗教文化の事例の比較など、話題が尽きることはありませんでした。

今回のセミナーを盛会のうちに終えることができたのは、ご協力下さった和歌山県新宮市の皆さま、学内関係者各位、そして何よりもご参加下さいました皆さま、ご関心をお寄せくださった皆さまのおかげです。心よりの謝意を申し上げるとともに、今後とも東大人文・熊野プロジェクトにご関心をお寄せいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。