2026年3月7日(土)から17日(月)までの10日間、東京大学とプリンストン大学の共催により、UTokyo NYオフィスおよびプリンストン大学にて、東京大学-プリンストン大学合同プログラムを実施し、東京大学の学生(東大生)8名およびプリンストン大学の学生(プリンストン生)8名が参加しました。
第4回目となる今回のプログラムでは講義、ディスカッション、サイトビジットを組み合わせた従来の構成を維持しつつ、今年度は以下4点の新たな試みを導入しました。
1点目は、参加者の募集方法です。東京大学からの参加者募集にあたっては、海外経験のあまりない学生や地方出身の学生への機会拡大を重視し、英語力を不問とするとともに、参加者の金銭的負担を軽減しました。その結果、72名の応募者の中から8名を選抜しました。参加者は学部1年生から学部4年生まで幅広く、文系・理系、男女比ともにバランスの取れた構成となりました。
またプリンストン側の参加者については例年通り、Global Japan Lab担当者が日本語履修者を中心に募集し、約20名の応募者から8名(1・2年生)を選抜しました。また、新たな試みとして、過去に同プログラムに参加した学生がTAとして参加し、特に自由時間において学生のリーダー役として大きく貢献しました。
2点目は、プログラムの構成です。UTokyo NYオフィスを講義拠点としつつ、ニューヨーク滞在の機会を生かし、ニューヨーク・タイムズ本社、朝日新聞ニューヨーク支局、国際連合、ジャパン・ソサエティ、コロンビア大学、ニューヨーク大学を訪問しました。各訪問先では、現地で活躍する日本人や東京大学卒業生から話を聞き、ディスカッションを行いました。
3点目は、プリンストン大学滞在中の取り組みです。東京大学出身のプリンストン大学大学院生に協力を依頼し、大学卒業後の進路やキャリアプランについて話を聞く機会を設けました。今回参加したプリンストン大学大学院生のなかには過去の本プログラム参加者や、プリンストン大学への交換留学経験者も含まれており、両大学のネットワークの広がりと厚みを実感する機会となりました。
4点目は、Japanese Language Sessionの充実です。書道の師範資格を持つ参加学生が3回分の授業を企画・実施し、毎回書道体験の時間を設けるなど、内容の充実を図りました。
3月8日(日)
プリンストン大学の学生と合流し、オリエンテーションを実施しました。彦谷教授によるプログラム説明および学生の自己紹介の後、日本食のケータリングによる昼食をとりました。東大学生とプリンストン生は急速に親睦を深め、チームとしての一体感が生まれました。

3月9日(月)
UTokyoNYオフィスに集合し、第1回日本語授業を実施しました。日本語教育のサポート経験を持ち、書道師範資格を有する学生による指導は分かりやすく、東大生がプリンストン学生を補助する形式も効果的でした。
午前中は、プリンストン大学のアン・ボロヴォイ教授による講義が行われました。新型コロナウィルス感染症に対する日本政府および東京都の対応をテーマとした講義は、各参加学生の経験や各国政府の対応、社会的受容の違いに関する活発な議論を促しました。講義終了後も、学生がボロヴォイ教授に対して積極的に質問する様子が見られました。

午後は徒歩でニューヨーク・タイムズ本社(NYT)へ移動しました。東京大学大学院修士課程で学んだスペンサー・コーエン氏(NYTオピニオン欄担当記者)の案内により、編集現場を見学するとともに、NYTの歴史や世界の重大事件を紹介するミュージアムを訪問しました。さらに、同社内に戦前から設置されている朝日新聞ニューヨーク支局を訪問し、田村剛支局長より支局の歴史や海外支局業務について説明を受けた後、活発な質疑応答が行われました。

3月10日(火)
プログラム2日目は、早朝に出発し、地下鉄でイーストリバー近くにあるニューヨーク大学大学院神経科学研究室を訪問しました。同大学院博士課程に在籍する原野新渚氏による講義「Defining the Global Citizen: Building a Global Career by Owning Your Story」が実施されました。講義では、同氏のライフストーリーやキャリア形成、自身の強みや情熱の見出し方、さらには弱みを強みに転換する視点などが示され、特に東大生に強い影響を与えました。

午後はコロンビア大学キャンパスを訪問しました。ジョージ・ナカシマの家具が設置された歴史あるケント・ホールのラウンジにおいて、太鼓芸能集団である鼓童の元メンバーであり、現在はコロンビア・ビジネススクールで学ぶ池永遼太郎氏の講演を聴講しました。鼓童のメンバーとして佐渡島で厳しい訓練を受け、世界各地でプロデューサーとして活躍するに至った経緯に加え、現在の学びを踏まえた各国の文化政策や助成制度についての考察が示されました。講演をめぐっては、幅広いテーマに関する活発な議論が交わされました。

夕刻はメトロポリタン・オペラにおいて『蝶々夫人』を鑑賞しました。多くの学生にとって劇場訪問およびオペラ鑑賞は初めての経験であり、その雰囲気を大いに楽しむ様子が見られました。事前に吉原真里グローバル教育センター教授による関連論文を読んでいたこともあり、作品理解が深まり、有意義な鑑賞機会となりました。

3月11日(水)
プログラム3日目は、第2回日本語授業から開始しました。プリンストン生が東大生の支援を受けながら、『蝶々夫人』の感想を日本語で発表しました。
続いて、在ニューヨーク日本国総領事館より片平聡大使・総領事をお招きし、「日米関係の現状」について講演をいただきました。外務省経済局長として日米首脳会談に関与されたご経験に基づく講演は、学生にとって大きな刺激となりました。講演後の質疑応答に加え、昼食にも参加いただき、学生との交流の機会が設けられました。

昼食後はジャパン・ソサエティを訪問しました。Joshua Walker理事長と面会し、同氏の生い立ちやこれまでのキャリア、現在の活動および今後の展望について幅広い話を伺うとともに、学生からの質問にも丁寧に対応いただきました。

その後は、国連本部を訪問しました。東京大学卒業生の丸崎玲氏(国連事務局運営支援局プログラム・オフィサー)より、「Crossing Cultures and Institutions: A Japanese Practitioner’s Journey from Government to the United Nations and the Future of Peacekeeping Capacity-Building」と題する講義を受けました。留学経験を契機としたキャリア形成や、国連職員までの経歴、現在の業務および国連の将来展望について説明がなされ、学生からの多様な質問にも丁寧に回答いただきました。さらに国連本部内の案内を受け、総会および安全保障理事会の議場を見学するなど、貴重な体験となりました。

3月12日(木)
みぞれ混じりの寒さの中、ニューヨーク市を出発し、バスでラトガーズ大学へ移動しました。同大学の学生によるキャンパスツアーの後、若林晴子教授による講義「Rutgers Meets Japan: A Trans-Pacific Network of Students, Teachers, and Missionaries in the Late Nineteenth Century」に参加しました。講義では、ラトガーズ大学図書館のFernanda Perrone氏が準備した史料(現地からの書簡や留学生に関する新聞記事等)を用い、学生は5つのグループに分かれて議論および発表を行いました。同時代の若者の活躍と苦労が日本の近代化に寄与したこと、さらにそれが日米両国およびニュージャージー州との結びつきの基盤となっていることについて、多くの学びを得ることができました。

その後、プリンストンへ移動しました。学生食堂での食事やキャンパス散策を通じて、現地学生と同様の生活を体験する様子が見られました。
3月13日(金)
プリンストン大学での講義が行われました。日本語授業の集大成として、プリンストン生が各自、色紙に好きな漢字を書き、その作品を手に発表を行いました。漢字の選定から筆(筆ペン)による作業まで、東大生がプリンストン生に寄り添いながら共に作業を行いました。


昼食後はプリンストン大学側のプログラム責任者であるJames Raymo教授と引率教員の彦谷貴子教授による授業が実施されました。レイモ教授は日本の人口動態について、彦谷教授は日本の安全保障政策および日米関係について講義しました。内容は東大生にとっては既知の部分もありましたが、かえってプリンストン生との議論のきっかけとなり、ディスカッションは活発に行われました。

3月14日(土)
プログラム最終日は、東京大学を卒業後プリンストン大学へ留学した卒業生を招き、アルムナイトークを実施しました。参加した卒業生はShuri Takabaさん、Etienne Gagnonさん、Xin Gangさん、Haruki Sugimotoさん、Lynn Hiroseさんです。それぞれの卒業生が東京大学からプリンストン大学への軌跡、現在の研究、将来のキャリア展望について率直に語り、学生たちからは多くの質問が投げかけられました。特に東大生にとって、今後の留学を考える上で有益で現実的なアドバイスを得る貴重な機会となりました。

続いて昼食を兼ねたリフレクションセッションが行われました。学生には事前準備として、①プログラム前後で自国や相手国に対するイメージがどう変化したか、②自分自身がプログラム前後でどのように変わったか、の2点についての発表を準備するよう指示しました。発表では、相互の国への印象の変化に加え、自身の成長や気づきを実感したことが発表されました。日本にルーツを持つプリンストン生は、自身と日本とのつながりを再確認し、今後の関わり方を考える契機となったとことを、日本語を学ぶプリンストン生は、日本との関わり方や留学の具体的ステップを考え始めるきっかけとなったこと、また、これまで自分の居場所を見出せずにいた学生も、自信を持ってキャンパス生活を送れるようになったと語っていました。
東大生も、新たな自分の面を知り、海外留学への意欲や英語力への自信を深めるとともに、課題点の認識にもつながったと話しました。引率教員から見ても、プログラム期間中の経験から、学生たちが表情や態度に変化を見せ、自信を付けていく様子が確認でき、本プログラムの意義を強く実感しました。参加学生全員にとって、広い世界に踏み出す大きな一歩となり、信頼できる友人との絆を築けたことは非常に意義深い成果であったと考えています。
